佐藤 貴信 歯科部長（森が丘医院 歯科)のインタビュー

おばあちゃん子が、おばあちゃんの歯を診てあげたいと考えて

　私はおばあちゃん子でした。共に医師である両親は忙しく、なかなか家に帰ってこれなかったものですから、祖母がつきっきりで見てくれていたんですね。その祖母は、昔から歯の具合がよろしくなくて……。「おばあちゃんの入れ歯を作ってあげたい」。その一心で歯科医師を目指すようになったのです。

　神奈川歯科大学卒業後は、神奈川県内の歯科医院で勤務医を務めました。やがて当院の院長である母が看取りを含めた在宅診療を始めたのを契機に東京に訪問歯科専用の医院を開院いたしました。そして2024年4月、それまで勤めていた勤務医を辞し、東京に続き当院でも診療をおこなうようになったのです。思い立った時からずいぶん時間が経ちましたが、歯科医師を目指すきっかけとなった祖母の入れ歯を手がけることができ、今も定期的にクリーニングをおこなっています。ようやくおばあちゃん孝行ができたという感じですね。

外来診療と訪問診療がシームレスに

　もともと内科に掛かっていらした患者さんが「ここ、歯も診てくれるの？」と言って一緒に来てくださるケースが多いですね。内科と歯科を一緒に予約されて、内科の診察が終わったらそのまま上に、という患者さんもおられます。お子さんももちろん拝見していますが、内科の受診が1つの入り口となっていることもあって、ご高齢の患者さんの割合が多いでしょうか。今のところ、メインとしては外来に来られる患者さんですが、これまでの経験を生かし、訪問診療もおこなっています。訪問先には最新のポータブル診療ユニットを持参し、3Dスキャナーを活用して口腔内の状況を患者さんやご家族にビジュアルでわかりやすくお伝えしています。むし歯治療はもちろんのこと、義歯の調整やクリーニングなど、ご自宅にいながら歯科医院と遜色のない治療を提供可能です。今は外来に足を運んでいる方の中にも、いずれそれが難しくなってくる時期はくるでしょう。その際、外来から訪問へとシームレスに移行できることは患者さんやご家族にとって大きなメリットになると考えています。

他科の医師や看護師と綿密に連携

　歯を診る歯科医師である前に、人を診る歯科医師でありたいと思っています。歯科はお口の中だけを診ることになりがちですが、特にご高齢の患者さんは持病を持っておられることも多々あり、そのうちの1つとして歯のお悩みがあるわけです。当院は医科の中の歯科という位置付けであり、医院には口腔外科や内科の医師が常駐し、放射線技師も在籍しています。その充実した人材と設備を活用し、全身に目を配りながらお口を診るという姿勢が私たちの大きな特徴です。1万人の方がいらしたら、1万通りの治療法があります。画一的な対応をするのではなく、その人その人の状況に合わせた治療を提供するが歯科医師なのです。

デジタル技術の積極的な活用

　勤務医時代は口腔内スキャナーを活用したデジタル技術の管理者を任されていた経験があり、当院においてもインプラントやマウスピース型矯正にデジタル技術を導入しています。デジタルは「精度が劣る」と言われていた時代もありましたが、セラミックスに関してはその懸念は過去のものと言っていいでしょう。ここでは入れ歯もスキャナーによる光学印象で製作可能です。特に訪問の場合、従来通りの印象材による型取りは誤嚥のリスクがありますが、スキャンするだけならその心配もありません。口腔内スキャナーに代表されるデジタル技術の活用は、今後ますますニーズが高まっていくものと考えています。

地域のみなさんへメッセージ

　お口の健康を保つことは健康寿命に直結します。少しでも長く、ご自分の歯で美味しく食事をしていただけるよう力を尽くしてまいります。ご希望に応じ、ご自宅にも伺えますので、お口のことでお困りのことがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

※上記記事は2024年8月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。